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環境保全は企業に利益をもたらす ―求められるエコ・テクノストラクチャーとエコ・プロシューマ―

大森 正之 大森 正之 明治大学 政治経済学部 教授

ライフスタイルの革新が求められる

 学生たちと共に進めている取り組みの一つに、明治大学がある東京・千代田区のエコ推進活動がある。千代田区は環境モデル都市に認定されており、地球温暖化およびヒートアイランド対策が目下のテーマだ。具体的には、「緑化ビル」の普及・促進である。「緑化ビル」はエアコン使用を抑制し、地球温暖化防止に繋がる。緑化の現場10数ヵ所をピックアップし、ビルオーナーからヒヤリングし課題抽出を進めている。目指すのは、地域独自の「千代田緑化ビル認証制度」の区への提言である。さらに今後進めていきたいのが、街路の緑化である。千代田区全体を三重の街路樹の回廊で包み込むという構想を描いている。
 この「緑化ビル」のように、近年は消費者が環境問題の解決に直接参画できる多様な回路が拓かれている。着目すべきは、太陽光などの自家発電によって余剰電力を電力会社に販売できることが可能になったことである。単なる消費者ではなく、生産もできる消費者である点に大きな可能性がある。生産者の機能の一部を分担することで省エネ意識が生まれ、それは、ライフスタイル全般を環境の視点から見直すことに連動する。環境問題は技術革新だけで解決するものでなく、消費者がライフスタイルを革新することが必要なのだ。エコ・イノベーションを促進する環境志向の生産消費者である「エコ・プロシューマ(プロデューサーとコンシューマから成る造語)」の養成は、「エコ・テクノストラクチャー」の育成同様に重要なテーマであり、大学のみならず社会全体でその人財を育成することを提言したい。

※掲載内容は2013年12月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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