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人は信じたいものを信じるから、フェイクニュースに操られる

明治大学 情報コミュニケーション学部 教授 江下 雅之

2016年のアメリカ大統領選挙では、当時のトランプ候補がツイッターを多用した選挙活動を行い、新しい選挙戦略として話題になりました。しかし、それを、現代の情報環境が生み出した新しい現象と見なすのは間違っている、という議論があります。どういうことなのでしょうか。

フェイクニュースは現代の情報環境が生み出したわけではない

江下 雅之 新しいメディアなり、新しい情報ツールによる特徴的な現象が見られると、私たちは、ついつい新しい社会現象と見なしがちです。しかし、技術的環境の真新しさにのみ目を奪われていると、ことの本質を見落としてしまうことがあります。例えば、アメリカのトランプ大統領は大統領選挙中から現在に至るまで、ツイッターを使った情報発信が多く、それは、いままでにない新しい社会現象と思われがちです。しかし、国のトップの立場にいるような人が、自分に都合の良い情報を発信すること自体は珍しいことではありません。例えば、16世紀の神聖ローマ帝国内の諸侯は、自らの侵略の正当性や業績の誇示などを公報を使って発信しています。報道の体裁をとって都合の良い情報を流すコミュニケーション行動と考えられるフェイクニュースは、歴史上、常套手段であり、普通のことなのです。トランプ大統領がツイッターを多用するのは、16世紀と違い、現代のテレビや新聞などの大手メディアは公共性が高く、自分の好き勝手な情報をストレートに発信できないからです。

 むしろ、トランプ大統領の「フェイクニュース」を信じる人たちが大勢いることの方が問題かもしれません。人は基本的に、信じたいものを信じます。つまり、発信される情報が、客観的事実のひとつの解釈であっても、あるいは完全なフェイクであっても、それを信じたい人は信じるのです。トランプ大統領が、アメリカ人労働者の職を奪っているのは移民だと言えば、それを信じたい人たちにとっては、その情報に根拠があろうがなかろうが、それは信じられる「事実」として受け入れられます。いまのアメリカでは、そうした人が国を二分するほどもいるということです。

 もちろん、事実の解釈は人によって様々にあるものです。そこで、大手のメディアなどには、専門家による解釈を提示するという機能があります。それは私たちの判断のガイドラインにもなっていました。ところが、現代の情報環境では、誰でも簡単に「私見」を発信でき、しかも、単純な解釈の方は短時間で理解できてしまうため、どんどん流布します。私たちは、信じやすいものを信じ、わかりやすいものでわかった気になりがちだからです。すると、大手メディアは事実を語らない、真実はネットの中にある、などという主張も出てきます。それは、わかりやすいということが求められすぎている結果ともいえます。

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