明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

体内時計を狂わすような生活は、人類を滅ぼす!?

明治大学 農学部 准教授 中村 孝博

体内時計の仕組みを応用したさまざまな研究が進んでいる

中村 孝博  実は、体内時計の研究はいまから20年ほど前に、哺乳類の時計遺伝子が発見されたことで飛躍的に発展しました。人の体内時計を支えているのは視交叉上核だけでなく、全身のひとつひとつの細胞にある時計遺伝子が概日リズムを刻んでいることがわかったのです。すなわち視交叉上核は、さまざまな細胞の時計遺伝子の働きも統括している、まさに中枢時計だったのです。

 全身の細胞に時計遺伝子があることがわかったことで、さまざまな研究への応用が進みました。例えば、いま私は家畜脂肪細胞の分化に関する研究を行っています。これは、細胞の時計遺伝子が脂質代謝の遺伝子に直接働きかけることで、脂質の代謝が促進されたり、抑制されるという研究が基になっています。つまり、時計遺伝子のリズムによって、太りやすくなったり、太りにくくなったりするわけです。私たちの日常でいえば、夜、ものを食べると太りやすいことを実感したり、食事時間を考えたダイエットが紹介されたりしています。それは時計遺伝子の働きによるのです。この仕組みをしっかりと解明して家畜に応用すれば、いままでと同じエサの量で、もっと効率的に太らせることが可能になるわけです。近年、食糧問題の解決策として実用化され始めた遺伝子操作には安全性に対する不安がありますが、体内時計の働きを応用した方法であれば、よりナチュラルで、より安全なのです。

 また、医療の分野では、時間治療が実用化され始めています。例えば、がん治療において、強い抗がん剤を投与する方ががん細胞には効果的です。ところが、抗がん剤が強くなるほど、副作用として健康な細胞にも影響を与えてしまいます。そこで、健康な細胞の活動が緩やかな時間帯、それは例えば睡眠時などですが、そのタイミングに抗がん剤を投与すれば、健康な細胞への影響を最小限にしつつ、がん細胞を効率よく攻撃することが可能になるのです。今後も、体内時計の仕組みを解明し、応用していくことで、より効果的な治療法がさらに開発されていくものと期待できます。

社会・ライフの関連記事

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

2018.5.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 加藤 彰彦
がん要因の45%は予防可能!! それを知らずに生活するのは危険

2018.5.16

がん要因の45%は予防可能!! それを知らずに生活するのは危険

  • 明治大学 文学部 専任講師
  • 宮脇 梨奈
悲愴をユーモアに変容する哲学を始めよう

2018.3.14

悲愴をユーモアに変容する哲学を始めよう

  • 明治大学 文学部長 教授
  • 合田 正人
炎上CMも流行現象のひとつ。そこから見えてくるのは…

2018.1.24

炎上CMも流行現象のひとつ。そこから見えてくるのは…

  • 明治大学 文学部 教授(2018年3月31日退職)
  • 市川 孝一

Meiji.netとは

新聞広告連動企画

新着記事

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

2018.05.16

がん要因の45%は予防可能!! それを知らずに生活するのは危険

2018.05.09

仮想通貨がもたらした新しい通貨間競争

2018.04.25

日本の企業は“内なるグローバル化”によって生き残る

2018.04.18

イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

人気記事ランキング

1

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

2

2018.05.16

がん要因の45%は予防可能!! それを知らずに生活するのは危険

3

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

4

2017.03.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

5

2017.12.06

ネット依存によって、現代人の脳の構造が変わりつつある!?

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム