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精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

明治大学 文学部 教授 高瀬 由嗣

大切なのは「人の心の理解と支援」

高瀬 由嗣 ある種の疾患は、非行や犯罪に結びつきやすい傾向があることが指摘されています。そうしたケースでは、早い段階に発見し、適切な治療を早くから行っていくことで、社会に上手くとけ込んだ生活を送ることが可能になってきています。その発見のために有効なツールとして、心理テストがあります。お子さんに気になる点があれば、医療機関などに早めに相談してください。例えば、注意欠如・多動性障害(ADHD)の傾向を持った発達障害は、以前は社会の理解がなく、変わった子とか、困った子と見られ、社会からドロップアウトしていき、犯罪者になっていくケースも多くありました。これは、社会の無理解がそうさせていたともいえます。しかし、発達障害に対する理解が深まってきたことで、早期発見、早期治療が普及し、適応的な生活を送っていくことが可能になってきたのです。

 いま、問題が大きいのは、障害がなく生まれたにもかかわらず、虐待やネグレクト(育児放棄)など、非常に過酷な家庭環境にあったことで、心の中にもの凄い深い傷が刻み込まれてしまうケースです。それは、そう簡単に治療できないような、とてつもない深い傷となり、それによる精神疾患から犯罪につながっていくことも多いのです。先に述べた永山則夫も、「山口県光市母子殺害事件」の加害者の少年も、家族から虐待を受けていました。このようなケースでは、ある意味、周囲の監視が必要です。しょっちゅう子どもの泣き叫ぶ声が聞こえる、子どもにあざや傷が絶えない、などの状況を見つけた場合は、警察や児童相談所に勇気をもって通報することも重要です。虐待する親などへの対応が遅れているといわれる日本ですが、それも変わりつつあります。

 あらためて訴えますが、社会には、犯罪につながってしまうような問題を抱えた人もいます。大切なのは、そうした問題に対する早めの対処と、問題につながるような心に傷を負う生活環境を予防する取組みを行っていくことです。不幸にして、何らかの心の問題を抱えた人による犯罪に巻き込まれた被害者や遺族には、その感情を汲むような形で犯人の厳罰を求めるのではなく、この事実を受け入れていくための支援をしていくことも重要です。加害者に対しても被害者に対しても、「人の心の理解と支援」が大切だと考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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