2024.03.21
原発を不要にした社会から、さらに永続可能な社会へ
大江 徹男 明治大学 農学部 教授地域主導型の再生可能エネルギーの推進が必要
原発に代わって注目されているのが再生可能エネルギーですが、しかし日本では、ドイツと異なり、一部の企業がメガソーラーを建設する動きが目立っています。確かに、太陽光発電の適性地、風力発電の適性地はあります。しかし、仮に北海道の適性地に巨大な風力発電を建設しても、北海道から本州に再生可能エネルギーで発電した電力を送るためには、北海道と本州を結ぶ連系線を拡張しなければなりません。莫大なコストと時間がかかります。また、巨大な太陽光発電や風力発電を、火力発電や原発と同じように特定の地域に偏在させるのは、台風や地震などのリスクを考えると、適切とはいえません。小規模でも良いので、各地の資源を利用した再生可能エネルギーを導入していくことが、自然災害リスクの分散にもつながります。なによりも、再生可能エネルギーは、単なるエネルギー供給手段だけでなく、農山村の経済を活性化させるための有力な手段でもあります。そのためには巨大企業ではなく、ドイツのように自治体や地域の企業、各種団体が中心になって再生可能エネルギー事業を展開することこそが大切です。
そうした意味で、成果を上げ始めている例として、岡山県真庭市のバイオマスがあります。ここでは、地域の資源である山林を活かし、間伐材や製材から出たゴミやおがくずを利用する地産地消型のエネルギー活用を行っています。さらに、単に地域の資源を利用するだけでなく、バイオマスを地域の林業や観光と組み合わせることで、衰退傾向にある林業の再生や地域経済の活性化を図っているのです。つまり、再生可能エネルギーが最終的な目的ではなく、地域資源を地域が主体的に有効活用することで地域再生を進め、永続可能な地域社会を構築することこそが重要なのです。