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2017.05.24

原発を不要にした社会から、さらに永続可能な社会へ

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原発は完全に時代遅れの政策

 こうした状況を受けて、東京電力は、中部電力と火力発電部門を統合し、老朽化した火力発電の設備を廃棄し、新しい設備に更新していく計画を打ち出しています。古い火力発電の発電効率が40~45%程度であるのに対して、新しい設備は55~60%に達します。この発電効率の差はとても大きく、老朽化した石油火力発電所や石炭火力発電所を最先端のLNG火力発電所に更新するだけで二酸化炭素を大幅削減することが可能です。また、火力発電の設備を更新する計画を立てたということは、原子力発電所が停止しても供給余力があると、東京電力が自ら認めたことを意味します。つまり、電力供給面において原子力発電の必要性は消失しています。しかも、原子力発電には依然として難問が山積みです。たとえば、原子力発電の中核を成す核燃料サイクルは、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定し、事実上、頓挫しています。また、福島第一原子力発電所の事故後、アメリカやヨーロッパ各国が原子力発電所の安全規制を強化したために、東芝やフランスのアレバ社に代表される原発関連企業の経営は急速に悪化しています。発電事業に従事する欧米の大手電力会社も、再生可能エネルギーに経営戦略の軸足を移しつつあります。原発がなくても電力の安定供給が達成されてきた状況を考えれば、原子力発電は、すでに完全に時代遅れの政策といっても過言ではありません。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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