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2016.11.09

高齢者支援問題を解決する地域コミュニティを創るには

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横浜市の「ドリームハイツ」に見る、住民主体のコミュニティ

長畑 誠 こうした地域コミュニティの在り方には、いま、日本が直面している高齢者への介護や支援の問題を考えるヒントがあると思います。バリ島の村民は、「上から」や「外から」の指示には反発し続けました。同じように、人生経験が長い高齢者の人たちに、若い人たちが、いまの行政のルールはこうだからこうしろとか、お金があれば民間のサービスが受けられますよと言っても、気持ち良く受入れてもらえることは難しいでしょう。緩くで構いません。まず、何かに一緒に取組むことから人と人のつながりをつくり、そこから発展させていくことが自然なのです。大切なのは、「上から」指示を出すのではなく、みんなで一緒に考える場を設け、人と人のつながりを生んでいくことです。

 横浜市戸塚区にドリームハイツという総世帯数約2300戸の大規模分譲集合住宅団地があります。1972年から入居が始まり、保育所や学童保育などを住民たち自身で創ってきたという歴史があります。近年は住民の高齢化が進み、一人暮らしのお年寄りも増えました。そこで、やはり住民自身が中心となり、NPOと一緒になって高齢者の見守りや、居場所づくりに取組んでいます。例えば、コミュニティ・カフェを創り、誰もが気軽に集い、交流ができるふれあいの場を設けたり、空き店舗を利用して歌や音楽を行うサークルを催したりと、住民が互いにつながりをもてる取組みを行っています。こうしたつながりから、住民がお互いを知ることや近所づきあいに発展し、それは支援を目的としていなくても、住民同士が自然と支え合うコミュニティへと成長していきます。こうした取組みが広く知られ、ドリームハイツは最寄り駅からバスで20~40分かかるという、決して良い立地ではありませんが、空き部屋がほとんどないといいます。

 最初は、集いの場を創ることや、歌や音楽のサークルといった文化的活動、何らかの仕事で少しでもお金が稼げるといった取組みでも良いでしょう。重要なのは、人々が楽しみや誇りをもって取組める“場”を創っていくことです。そうしたことがきっかけで人と人の緩いつながりが始まり、コミュニティの再興につながっていきます。こうしたコミュニティの在り方が、高齢者の支援に限らず、子育てや教育、防災、防犯、環境保全など、地域が抱える様々な問題の解決の糸口にもなっていくと思います。

 住民の皆さん自身が主体となり、自治意識をもって、こうしたコミュニティ創りに取組めるようにサポートしていくことが、行政やNPOにいま求められている役割だと思います。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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