2024.03.14
高齢者支援問題を解決する地域コミュニティを創るには
長畑 誠 明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科 教授いま、日本は超高齢化社会(65歳以上が人口の26.7%、80歳以上の高齢者が1千万人超)を迎えています。さらに、団塊の世代が後期高齢者となり、介護サービスが圧倒的に不足する「2025年問題」が大きな問題となっています。そこで注目されるのが、地域の住人たちが互いに支え合う、昔ながらの地域コミュニティです。しかし、近所づきあいも希薄な現代、どうすればこうしたコミュニティを取戻すことができるのでしょう。
発展への疑問が目を向けさせた、日本に昔からあった自治のスタイル
私がNPOの活動を始めたのは、大学院生の頃にバングラデシュで活動するNGOに参加したことがきっかけです。現地に駐在したのは1990年代のことで、当時、バングラデシュは世界最貧国のひとつといわれていました。特に農村部に行くと、1日3回の食事もまともに摂れないような人たちがたくさんいました。それでも、自分たちの子どもには良い教育を受けさせ、良い暮らしをさせたいと、人々は将来に目標と希望をもって助け合いながら頑張っていました。そこには、日本人が失ってきた昔ながらのアジア的な人のあり方とか、人と人のつながり、それをベースにした社会があり、私はそれに惹かれて住民の皆さんのお手伝いをする活動をしていました。そうして、子どもたちを都会の高校や大学に送り出していったのですが、すると農村には若い人がいなくなってきました。人々が頑張れば頑張るほど、農村から若い人が居なくなり、都会は過密になり多くの問題が起きてきたのです。皆さん、日本は素晴らしく発展した良い国だ、日本のようになりたいと言っていましたが、突き詰めて考えると、発展とは一体何なんだろう。いま「発展途上国」といわれる国は、日本のような社会を目指せばよいのだろうか。そんな思いを抱きながら、バングラデシュでの駐在を終え、私は日本に帰国しました。
帰国してしばらくそのNGOで働いた後、「いりあい・よりあい・まなびあいネットワーク」という団体を立ち上げました。現在の「あいあいネット」という一般社団法人の前身となる団体です。名称にある「いりあい」と「よりあい」は、村落の共有地である山林や原野などの入会地を持続的に使うために、住民みんなで寄り合って話し合いながら管理し守ってきた、日本に昔からある制度のことです。地域の資源をみんなで共同管理する「いりあい」と「よりあい」によって地域の自治とコミュニティが生まれ、それは、自分たちで自分たちの地域を良くしていく様々な取組みにつながっていきました。そんな仕組みが日本には昔からあったのです。現代でも、こうした思いをもって活動している人たちをつなぎ、互いにまなびあう場を創っていこうというのが、私たち「あいあいネット」が行っている活動です。