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異質な者を受け入れる社会へ ー少年法・厳罰化の動きをめぐってー

明治大学 法学部 教授 上野 正雄

厳罰化が進む少年法改正

 少年法の厳罰化の傾向は一層顕著になりつつある。現在、法制審議会で議論されている少年法改正案も厳罰化の方向にある。たとえば罪を犯した少年に対する不定期刑(少年法では早期更生の可能性を考慮して、刑期を確定しないで判決を言い渡す)の上限を、長期は10年から15年に、短期は5年から10年に引き上げることなどが検討されている。端的に言えば、“応報”的な考えであり、罪を犯した少年をより長く刑務所にとどまらせるための法改正といっても過言ではないだろう。これは立法における厳罰化の傾向だが、裁判の現場も同様の傾向にある。数値的に判断するのは難しいが、私が法曹関係者からヒヤリングする中で感じるのは、従前であれば少年院送致などの保護処分になるようなケースが、近時は検察官に送致され、刑事裁判を経て、懲役刑などの刑事処分になることが多くなりつつあるということである。こうした傾向にあるのは、裁判所の判断が、少年が犯した行為に重点を置きすぎているためでないかと私は思う。つまり、少年自身が抱えている、非行にいたる原因となる問題を解決することによって少年犯罪を抑制していくという考えが希薄になりつつあるように思えるのである。

少年犯罪は減少している

 ここで留意したいことがある。それは少年法の厳罰化が進むほどに、少年犯罪は増えているかということである。犯罪の現状を感覚的に感じる“体感治安”に委ねるのでなく、統計等科学的なもの通して評価したい。凶悪犯罪である殺人の少年検挙数は1951年の448人に対し2011年は59人、強姦では1958年の4649人に対し2011年は79人、いずれも著しく減少している。もちろん暗数(公的機関が認知している犯罪の件数と実際に起きている件数との差)を考慮する必要はあるが、このように、少年犯罪は確実に減少傾向にある。それにもかかわらず、法律は厳罰化へと舵を切っているのが現実なのである。
 私は裁判官として多くの罪を犯した少年に接してきたが、それらの少年の中で親から虐待を受けた経験を持つものは非常に多い。少年院在院者の4割近くが被虐待経験ありとの統計もある。また学校でいじめを受けていた少年も少なくない。彼らには自分の居場所がどこにもない。それを求めて非行グループや犯罪組織に加わるケースも多いのだ。また、少年が少年院や刑務所から社会に戻ったとき、職場や学校、地域、つまり社会が受け入れるかどうか、戻っていく場所があるかが大きな問題である。社会が少年たちをどのように引き取るか、どのような場を提供できるか。社会に戻ってきた少年が社会と折り合いをつけて生活できる、その実現こそが結局社会のためになることであり、真の解決といえる。

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