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都知事が自らを権力者と思っては、どこからも支持は得られない

 ところが、このような日本独特のシステムがメディアにも、したがって市民にもしっかりと認識されていないように感じられます。一般に、都知事というと巨大組織の権力を握る独裁者のように思われており、都知事の職に就いた人までもがそのような誤解を抱いていると、都議会とも、都の職員とも良好な関係を築けず、どんなに政策を抱いていても実現することは難しくなります。

 猪瀬氏の前の都知事であった石原氏を思い出していただきたいのですが、石原氏はディーゼル規制を公約に掲げました。当時、私は副知事の職に就いていましたが、この公約を実現するのは大変で、フィルターの補助制度を創って自動車業界や運送業界を説得したり、近県の知事たちにも賛同するように交渉を重ね、各県で条例を創ってもらうなど、粘り強く取組み、最初の当選から2期目、4年半をかけて実施に至りました。石原氏はメディアなどに出るときは、それこそ独裁者のような言動をしていましたが、その実は、都議会や職員との関係を理解し、その上で強いリーダーシップを発揮し、こだわりの政策を実現へと導く都知事でした。都の職員は、もともと都知事に対するロイヤリティは強烈にもっています。それは、都知事は都民が選んだ人だからです。その都知事が20年後、30年後の都市構想を抱き、そのために必要な政策を強い意志をもって実現しようとすれば、職員はとことん尽くします。

 しかし、職員を使用人であるかのように扱っては、支持はされません。都知事は権力者ではなく、責任者なのです。それを勘違いしてはいけません。桝添氏のスキャンダル時、都の職員の対応が桝添氏に冷ややかに思えたのも、それが原因かもしれません。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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