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2016.07.27

多様性に価値を見出す社会への変化を示唆する「LGBT」ブーム

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変化が現われた社会や企業の取組み

田中 洋美 最近は、マスコミによる性的マイノリティの取上げ方も変わってきたと感じます。以前は、女装のタレントは、オピニオンリーダー的数人を除けば、テレビのバラエティ番組などで面白おかしく取上げられるのがほとんどでした。しかし、性的マイノリティのタレントや一般の人がどういう風に暮らし、どんな悩みを抱えているのかを正面から取上げる番組も作られるようになってきました。視聴者の関心のあり方は様々でしょうが、性的マイノリティのメディア表象に変化が起きているのは事実です。

 「LGBT」への注目が高まった背景には、2015年4月に東京都渋谷区で施行された、同性カップルにパートナーシップ証明書を発行する条例が、テレビや新聞で大きく取上げられたことの影響もあったと思います。同じような取組みは、東京都世田谷区や三重県伊賀市など、他の自治体でも行われるようになってきましたが、こうした自治体は、男女平等や多様性を尊重する社会の推進のための取組みを以前から行ってきています。「同性婚」のところだけに関心が集まっていますが、これをきっかけに、多様性を尊重する考え方に理解が進んでほしいと思います。

 最近では、政府や企業もダイバーシティ(多様性)を唱えるようになってきました。経済産業省では、2012年から「ダイバーシティ経営企業100 選」を実施し、2016年度からは、「新・ダイバーシティ経営企業100 選」とし、働き方改革・女性の職域拡大等の分野を設け、より広く経営に効果のある事例を募っています。また人事採用や企業内研修、CSR等で、「LGBT」に関する支援や啓発等に取り組む企業も増えています。その根底にあるのは、企業競争力の強化を図ることでしょう。もちろん企業である以上、競争力を高め収益を上げることは重要な目標です。しかし、個を尊重し、ダイバーシティを目指すことには、多少コストがかかっても、差異を認め合える企業文化を創っていくという選択もあるはずです。自分たちの会社が拠点を構える社会全体を、もう少しリラックスした、緊張のない社会にしていきたい、そんな意図を持って営利活動に従事するのか、これからの企業はその選択が問われていくのではないかと思います。それは、私たち自身がどんな社会を目指し、いまをどう創っていくのかにつながることです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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