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多様性に価値を見出す社会への変化を示唆する「LGBT」ブーム

明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授  田中 洋美

LGBTという言葉を聞いたことがあるでしょうか。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を組み合わせた言葉で、さまざまな性的少数者の総称のひとつです。LGBTという言葉で現わされつつある中、少しずつ状況が変わってきているようです。

19世紀になってから形成された、異性愛/同性愛という区分

田中 洋美 長いこと、異性愛が“正常”であり、同性愛は“異常”と考えられてきました。しかし、異性愛/同性愛という二分法的思考が形成されたのはヨーロッパで19世紀になってからであることが歴史研究でわかっています。古代ギリシャには少年愛があったことが知られていますが、キリスト教の影響で生殖につながらない性行為を罪とするようになり、近代精神医学の発展に伴い、アブノーマルとする考えが広がったのです。同じようなことが、明治期以降の日本においても起こりました。西洋の近代的な考えを積極的に取り入れていった時代ですが、結果、多様よりも画一を押しつけるような社会に変わっていき、それは現代まで続いてきたといえるでしょう。じっさい江戸時代までは、稚児愛や衆道といった同性同士の性的な関係が知られ、また異性装にもそれほどの違和感はありませんでした。男色を題材とした物語などは室町時代からあり(たとえば、江戸時代には井原西鶴の「男色大鏡」)、異性装を扱った「とりかへばや物語」の成立は、平安末期から中世初期にかけてではないかといわれています。現代人の目から見ると、かつての日本は、多様なセクシュアリティをそのまま受入れていた社会であったように感じます。

 このように、人間のセクシュアリティやジェンダーの歴史を紐解いてみると、時代ごとに大きく変わっているのがわかります。いま、当たり前だと多くの人が思っていることも、何世紀か遡ってみると、当たり前ではないことがあるのです。生物学の観点とはまた違い、社会学では、何が普遍なのか、何が人間の本質なのかは、決めつけることはできないと考えます。いまの私たちにとってどんなに当たり前だと思えることも、今後また変わり得る可能性があるのです。そして、実際にいまが、性的少数者を取り巻く環境が変わろうとしている歴史的に重要な転換期であるのかもしれません。

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