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少子化対策に最も有効なのは男女共同参画社会の形成
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少子化対策が叫ばれて久しくなります。厚生労働省が公表した2015年の人口動態統計によれば、出生数は100万5千人ほどで、1人の女性が生涯に生む子どもの平均数を示す合計特殊出生率は1.46となりました。過去最低の1.26だった2005年から持ち直してきたといわれますが、出生数をみると、2005年でも106万3千人でした。日本の少子化は本当に持ち直してきているのでしょうか。

人口学から少子化を考える

安藏 伸治 私は人口学を専門としています。人口学とは、人口変動それ自体を研究するものと、人口変動と社会的、経済的、政治的、さらに生物学的、遺伝学的、地理的などの要因との関係を研究するものがあります。そうした研究をするためには信頼できるデータが不可欠で、それらを用いて検証していく非常にデータオリエンテッドな学問です。この人口学の観点からみても、日本の少子化は危機的状況にあるといわざるを得ません。例えば、人口維持のための合計特殊出生率は2.07といわれています(人口置換水準)が、過去最低だった2005年の1.26は、この人口置換水準の約6割の水準でした。この水準ですと、単純計算すれば、この子たちの世代の人口規模は親の世代の6割になり、この出生率が2世代続くと、孫の世代の人口は36%になってしまうわけです。これで日本は成り立っていけるでしょうか。もちろん、政治もただ手をこまねいているばかりでなく、様々な対策に取組んでおり、その結果、2015年には出生率が1.46に持ち直してきました。しかし、出生率とはその年に女性人口に対する生まれた子ども数です(単純にいえば、「出生数」÷「15歳から49歳の女性人口」)。その計算の分母となる女性人口が第二次ベビーブーム世代を最後に毎年減っているのですから、出生率が多少上昇するという数字のマジックが起こりますが、出生数の減少にはそれほど歯止めはかかっていません。実際、出生数は2005年の106万3千人に対して、2015年は100万5千人です。このペースでいくと、2016年の今年は、出生数は100万人を切るだろうと推測されています。では、なぜこれほど少子化が進むのでしょう。人口学の観点からその原因と対策を考えます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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