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2016.06.09

不妊のメカニズムを解明する新たな研究

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しっかりとした基礎研究から新たな応用が生まれる

加藤 幸雄 実は、私の本来の研究は、下垂体ホルモン遺伝子の発現制御とか、下垂体の発生と分化についての基礎研究です。この研究で一般的によく使われる手法として、トランスジェニックラットを作製する実験を行い、その過程でヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子が精巣で発現し、その雄に精子形成の異常が見られることに気がつきました。基礎研究では、まず正常という状態をしっかり把握した上で実験などに取組むので、異常を敏感に発見し、正常からどうして異常になるのかを考えることにつながります。その結果、正常というものをより良く理解できることにもなります。応用研究の成果は人の生活に直結するので注目が集まりがちですが、それに比べて地味な基礎研究も、その内容はとても重要なのです。

 一人の研究者が、基礎から応用まですべてこなすのは負担が大きく、現実的には無理な場合が多いと思います。そこで、基礎研究者と応用研究者のコミュニケーションが必要であり、大切です。今回のヘルペスウイルスと不妊の研究も、別のテーマでコツコツと行っていた実験についてちょっとした疑問がわき、中国の産婦人科医が共同研究してくれる形で進展させることができました。 いま、様々な研究を学んでいる学生の皆さんも、応用研究の成果にとらわれるだけでなく、基礎研究を大切にする視点を忘れないでもらいたいと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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