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仮想通貨がもたらした新しい通貨間競争

明治大学 商学部 教授 高浜 光信

新しい金融資産として注目されていた仮想通貨が消失や不正流失の事件を起こし、金融庁が交換業者に対して行政処分を行う動きになっています(2018年3月8日現在)。もっとしっかり取り締まるべきだという意見がある一方で、もともと金融資産として生まれたわけではない仮想通貨が、このような事件で無に帰してしまわないか、心配する声もあります。

第2次世界大戦後、基軸通貨国として通貨発行特権を享受するアメリカ

高浜 光信 なぜ、仮想通貨のようなものが生まれたのか。これを理解するのに、国際金融史、特に第2次世界大戦後の歴史をたどってみるのは興味深いかも知れません。1945年に、大戦で混乱した国際通貨制度を再構築する目的でIMF(国際通貨基金)協定が結ばれ、ブレトンウッズ体制が発効します。これは、金またはアメリカのドルに、各国が自国通貨の為替相場を固定し、1オンス=35ドルという水準で、間接的に金と結びつく金為替本位制でした。ところが、自国通貨をドルに固定するためには潤沢なドル準備が必要ですが、大戦で壊滅的な状態にあった各国は極端なドル不足の状態であったため、アメリカのマーシャルプランに代表される経済復興援助計画のもと、公的ルートでドルが供与されます。こうして、アメリカは世界の基軸通貨国になっていくのです。この背景には、アメリカは大戦による被害がほとんどなく、世界で唯一活発な一大工業国であり、当然、貿易収支は黒字で、ドルには信認があったからです。ところが、その後、アメリカは世界各地の紛争に手を出した結果、軍事支出が増大し、財政赤字も増大したことで、インフレ体質になっていき、貿易収支も赤字化していきます。それでも、基軸通貨国であるアメリカはドル紙幣をどんどん刷り、それを各国が受取ってくれるので、貿易収支の赤字は容易にファイナンスされます。つまり、通貨発行特権、いわゆる負債決済の特権の濫用に陥ったわけです。これに対して、経済復興を徐々に遂げつつあったヨーロッパ諸国は、非常に反感をもちます。そこで、1960年代になると、フランスなどは、保有するドル準備と金との交換を公然と求め始めます。これに応ぜざるを得ないアメリカは、金の保有高を急速に減少させていくことになります。すると、1971年、アメリカは金とドルの交換停止を一方的に宣言します。いわゆるニクソン・ショックです。これにより、ブレトンウッズ体制は終焉し、スミソニアン体制を経て、主要国による変動相場制に移行するのです。

 第2次世界大戦後からニクソン・ショックまでの流れは、アメリカが基軸通貨国になっていき、一方で、非基軸通貨国が、基軸通貨国の一種の横暴である負債決済の特権、つまり通貨発行特権をいつまでもアメリカに享受させておくわけにはいかないという思惑から、両者の対立が顕著になっていく動きであったといえます。

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