
2018.04.25
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
最近は、善玉菌はがんの治療や老化防止に役立つといわれることもありますが、いまのところ、それは実証されていません。しかし、理論的にはあり得ます。善玉菌を増やせば悪玉菌が減り、生成される腐敗物質も減ることになります。さらに、善玉菌は腸の運動を良くするので、腐敗物質が腸に滞在する時間を短くすることもできます。すると、細胞が汚染される機会が減り、がん化する確率が下がります。また、細胞の遺伝子レベルに異常が起きた場合も、それが腫瘍になるまでには何段階もの免疫システムをくぐり抜けていくのですが、先に説明したような免疫に関係する善玉菌が多く、アポトーシスのシグナルとなる物質が多く作られれば、そうした異常な細胞を死なせる確率は高くなります。老化に関しても同じように、腐敗物質が少なければ老化促進を防ぐことができるし、免疫力が高まれば、高齢になっても病気に罹りにくくなるし、病気になっても抵抗力が高ければ回復することができます。こうした研究は、いまマウスなどで行われています。人に応用できる時期も意外と早いかもしれません。
いま、腸内細菌の研究者の間で一番問題になっているのは、加齢とともに、いわゆる善玉菌が減っていくことです。すると、腸内細菌全体の構成のバランスが変わってしまうのです。善玉菌も悪玉菌も、エサとなるものはほとんど同じです。なぜ、善玉菌の減り方だけが早いのか、いまのところわかっていません。防ぐためには、意識して善玉菌を含む食べ物を多く採ることです。ブルガリア地方の人が長寿である理由として、ヨーグルトを大量に食べていることが注目されたのも、こうしたメカニズムがあるからです。