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2017.06.21

効果的な高齢者用補聴器を目指して、1/100秒の壁に挑む

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補聴器はなぜ普及しないのか?

 老人性難聴の特徴は、急に聞こえが悪くなるのではなく、だんだんと聞きづらくなること、そして、まず、高い音が聞こえなくなる、似た音域の音が分別できなくなる、早口の言葉が聞き取れなくなる、大きな音はいままでのように聞き取れるが小さい音が聞き取れなくなる、といった点が挙げられます。難聴を補助する道具として、補聴器がありますが、あまり普及していないのが現状です。自分は難聴者だと思う65歳以上の人で、補聴器を所有しているのは15%程度だというデータもあります。補聴器を使わない大きな理由は、補聴器をつけてもあまり効果が感じられないからだといいます。例えば、ひとりでテレビを見ているときは補聴器をつけると聞きやすいが、様々な音がある外に出ると、相変わらず聞きづらかったり、ときには、うるさすぎるのでつけない方が良いというのです。それは、メガネと比較するとわかりやすいのですが、一般的に、目が悪いというのは、光を取り入れて伝える目の水晶体の機能が悪くなるからで、それを脳に伝える網膜は衰えていません。そこで、メガネを使って取り入れる光を補正するわけです。ところが、老人性難聴の場合は、音を取り入れて伝える耳の機能は衰えておらず、取り入れた音を拾い上げて脳に伝える蝸牛の有毛細胞が衰えているのです。そこで、補聴器は、ディジタル信号処理の技術を使い、ある程度機能している有毛細胞が音を拾い上げやすくなるように様々な工夫をしているのです。しかし、小さな音が聞こえてうるさくならず、似た音域の音が分別できて、早口も聞き取れるという、老人性難聴の特徴をすべて補助するのは、非常に難しいのです。メガネによって視力を復元するように、補聴器で元の聴力を復元するのは不可能とも言われています。しかし、ディジタル信号処理の技術は進歩しています。老人性難聴に適した、より快適な補聴器を開発する取組みは様々な形で進行しています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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