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2015.11.13

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」から考える、いま私たちがすべきこと

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企業に求められる社会的責任のあり方

 よりマクロな視点からの問題解決には、政府だけでなく、グローバル化が進む先進国の企業の協力も必要です。従来の企業の関わり方といえば、寄付や慈善活動などが中心でした。しかし現在では、CSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)のいう考えが拡がりをみせるなか、いかに途上国や世界全体の問題と自分たちの事業を絡めていけるのかを、企業側も探るようになっています。例えば、先進国では洗剤や調味料がボトルサイズで販売されていますが、途上国では一回分ずつ小分けされたものが店先に並んでいます。すると、商品の単価が下がり、収入が少ない層の人たちも買えるようになります。その結果、洗剤を使うことによって衛生状況が改善されたり、調味料に必要な栄養素を入れることで、栄養失調の軽減にもつながっています。このように貧困層の問題の改善を促しながら、企業としても収益を上げる「BOPビジネス」という事業が注目を集めています。

 また、途上国からの搾取を是正するために、適正な価格で取引する「フェアトレード」も重要です。例えば、コーヒーの原産国の多くは途上国ですが、コーヒー農園の労働者が得る収入は、先進国の消費者がコーヒーを飲むときに払っている価格の内、わずか数%程度といわれています。これでは搾取といわれても仕方ありません。そこで、先進国の企業がより適正な価格で取引すれば、途上国の人びとの労働環境の改善や収入の向上につながり、そして先進国の消費者が世界の現状を理解するきっかけにもなります。BOPビジネスもフェアトレードも、やり方によっては批判されることもありますが、企業の関わりを考えていくうえでの大事な一歩であるでしょう。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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