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2014.11.01

米国中間選挙を検証する ―オバマ大統領リーダーシップの変遷と戸別訪問の重要性―

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その「取引型」リーダーシップが、今回の中間選挙では成功しなかったのでしょうか。

 オバマ大統領は今回「取引型」を徹底しなかったのです。私は今回の中間選挙でもワシントンに入りましたが、最初に感じたのはオバマ陣営であるヒスパニック系の人たちの怒りでした。「いつまで自分たちを利用するのか」と。ヒスパニック系の人たちは、不法移民であっても、犯罪歴がなく英語も学び、ハイテク産業や農業などに従事する人には永住権を与えるという大統領令を期待していたのです。しかしそれは発令されず、ヒスパニック系の人たちには大きな失望があり、それは怒りとなって現れたのです。投票に行かないように呼びかけるヒスパニック系の団体もありました。

オバマ大統領はなぜ「取引型」を徹底しなかったのでしょうか。

 女性有権者に対しても同様で、「取引」を徹底しませんでした。米国の労働者の賃金比率は男性1ドルに対して女性は78セント、アフリカ系女性は65セント、ヒスパニック系女性に至っては56セントという状況です。そして現在、連邦政府が定める最低賃金(1時間当たり)は7ドル25セントで、そのほとんどは女性労働者が占めます。こうした中、オバマ大統領は最低賃金を上げて10ドル10セントにすることを打ち出しました。この政策が実現すれば女性有権者の票を集めたと思われますが、身内の民主党候補がオバマ大統領と距離をあけたために、強くアピールできませんでした。ヒスパニック系の人たちと同様に、「取引型」を徹底できなかったのです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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