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地球温暖化時代のサステナブルな暮らし方とは ―モンゴル遊牧民に学ぶ―

明治大学 商学部 教授 森永 由紀

温暖化と環北極圏開発

森永由紀教授 昨年から今年にかけて、地球温暖化の科学的評価を行うIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change,気候変動に関する政府間パネル)が、第5次報告書を逐次公表しており、そこで今世紀末までに世界平均地上気温は0.3~4.8℃上がるという予測値が出された。最終氷期の平均気温が今より5℃前後しか低くなかったとされるので、これは短期間に大きな気温上昇が起きうることを意味し、私たちの社会・生活に少なくない影響をもたらすと考えられる。
特に私が注目しているのは、北極圏を中心とする高緯度での気温上昇が、世界平均よりも大きくなると予測されている点だ。北極圏は温暖化の影響を最も大きく受ける地域の一つとされており、その影響には海氷の著しい減少による海洋生態系の大きな変化などがある。一方で温暖化は、人間の居住や活動の範囲を拡大させるトリガーの一つとなる可能性がある。アメリカの地理学者であるローレンス.C.スミスが指摘するように、温暖化に加え、人口増加やグローバリゼーションの影響などによって、今、環北極圏が開発の対象として注視されている。

「北極の時代」がもたらすもの

 スミスは、著書「2050年の世界地図 迫りくるニューノースの時代」の中で、今後、これまでは先住民以外に住まなかった地域で雪氷が融解して資源探査が進み、海運活動が拡大、観光や漁業が活発化して、人口も増加すると指摘している。つまり、今まで極寒で人が入れなかった地域に経済的合理性が見出されて、開発が加速することが予測されるのだ。「北極の時代」の到来である。「北極の時代」に向けた動きは、様々な分野で活発化しつつある。たとえば、温暖化による北極海の氷の縮小は西と東を結ぶ新たな航路・北極海航路を現実のものとした。さらに各国の環北極圏開発に拍車をかけているのが、海底に眠る資源だ。北極海には石油、天然ガスをはじめ金、ニッケルなどの鉱物が豊富にあるとみられている。
こうした環北極圏開発にはいくつかの懸念すべき問題がある。かつて旧ソ連が極寒のシベリアに強引に都市を作ったように、莫大なエネルギーを消費する都市やそれを維持するためのインフラが、環北極圏にいくつも作られるかもしれない。これまで先住民が暮らしてきた土地では、カナダのオイルサンド採掘地のように、資源探査に伴う環境破壊がすでに進んでいる。「北極の時代」という大きな潮流の中で、残された数少ないフロンティアに人の手が入ろうとする今、私たちは「人間の暮らし」を、よりプリミティブな視点から捉え直す必要があるのではないか。私が研究対象とするモンゴルの遊牧民の暮らし方は、そのための有効な示唆を与えてくれる。

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