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イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

山岸 智子 山岸 智子 明治大学 政治経済学部 教授

イスラームを知ろうとしない日本は置いてけぼりになる!?

 では、イスラームの国々がパラダイスかといえば、決してそうではありません。大学を出た女性が社会で活躍できるかといえば、まだまだ難しいのが現状です。短パンにタンクトップ姿でスポーツを楽しむ女性がいる一方で、スポーツにアクセスもできない女性が何億人といます。優れた現代文化を育んでいる一方で、戦争や暴力的な出来事も後を絶ちません。改善、改革すべきことはたくさんあると思います。でも、それは日本でもアメリカでもフランスでも同じです。ひとつのイメージで括ることができる国はありません。イスラームの国々も同じです。問題は、私たちがイスラームの情報に触れても、それを頭の中の「いらないボックス」に入れて知ろうとせず、知らないことに平気で、ステレオタイプのイメージだけをもっていることです。

 いま、世界中に散らばるイスラームの国々の人たちは、発達したICTを使い、友人や縁戚が遠くに住んでいても濃密な情報交換を行うようになっています。そこでは、イランで起きたことが、あっという間にロサンゼルスやケルンで共有されたり、グローバルなビジネスの話が広がったりしているのです。強い一族意識や同胞意識をベースにしながらも新しい展開があって、そのネットワークがグローバルな「社会化」のプロセスになっていく可能性もあると思います。そのとき、「知らない」ままでいる日本が置いてけぼりになる可能性だってあると思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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