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イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

明治大学 政治経済学部 教授 山岸 智子

2001年の同時多発テロや、日本人も犠牲になったIS(イスラム国)の活動などにより、イスラーム教とは怖い宗教だというイメージになっています。それは、本当のイスラーム教を知らないからだという指摘もありますが、「知らない」からではなく、「知ろうとしない」ことが問題だといいます。

頭の中の「いらないボックス」に入れられるイスラームの情報

山岸 智子 イスラーム教やイランなどの研究をしている私たちにとって奇妙に思うのは、国際社会が眉をひそめるような出来事や事件が起きたとき、それをキリスト教徒や仏教徒が起こしたときはあまり宗教の問題にされませんが、イスラーム教徒が起こしたときは、イスラーム教が問題にされることです。例えば、アメリカのトランプ大統領にはキリスト教の福音主義派という大きな宗教団体がついています。でも、トランプ大統領が排外的な政策をとったり、白人至上主義を擁護するような発言をしても、それはキリスト教が悪いからだとは言われません。また、IRA(アイルランドの民族主義過激派武装組織)が神の名において爆弾を作っても、それでキリスト教が非難されることはありません。チベットで政府に抗議するために焼身自殺をする仏教徒がいても、仏教は命を軽んずる宗教だと言われることはありません。ところが、イスラーム教徒の過激派がテロを起こすと、それはイスラーム教に問題があるように思われます。おかしくないでしょうか。

 おそらく、多くの日本人はイスラーム教や中東のことについて正しい知識をもっていないからだと思います。それは、情報が少ないからだという意見もありますが、実は、日本のマスメディアで流されるアラブや中東の情報量だけでも結構あるのです。ところが、そうした情報に触れても、多くの人が頭の中の「いらないボックス」にその情報を入れてしまうのです。例えば、今年のお正月に、イランで反政府デモが拡大するニュースがありました。これは、お正月のニュースの中でも大きなニュースで、新聞だけでなく、NHKの夜の7時台のニュース番組でも取上げられました。おそらく、多くの日本人が目にしているはずです。でも、どれだけの人が覚えているでしょう。中東は日本から遠い国で、そこで起こっていることは自分には関係ないことだという思いが、情報を「いらないボックス」に入れてしまうのだと思います。しかし、イスラーム教徒は世界中に15億人もいます。彼らのネットワークはとても広い範囲に及んでいます。世界の動きや、それが日本に及ぼす影響を理解しようとすれば、イスラーム教や中東について知らないで済ませることはできないのです。

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