2024.03.21
- 2018年2月28日
- 国際
このままでは、日本は武器輸出大国になる!!
横井 勝彦 明治大学 名誉教授(元商学部教授)武器輸出拡大の世界史的構造
ここからは少し時代を遡って、いつ、どのような理由で、各国政府が武器の輸出を容認し、奨励してきたのかを紹介しておきます。結論を先取りして言えば、防衛予算が縮小しても、戦争がなくなっても、国内兵器産業の利害とその生産基盤を保護するために、民需産業への転換ではなく、海外への武器輸出を拡大する道を選択してきたのです。
例えば、アメリカにおいて、ベトナム戦争後に急増した有償援助政策や冷戦終結後の対外有償軍事援助制度の狙いは、アメリカ国内での武器需要の減少を海外への武器輸出で補えるよう、政府が兵器産業の武器輸出を保証し、支援することにありました。さらに遡って、第一次大戦後の軍縮不況期においても、同様の構造を確認することができます。イギリス政府は、戦後に余剰兵器が世界中に拡散して帝国防衛が危機に瀕することを恐れ、世界で初めての武器輸出禁止令を発布し、さらに輸出信用保証制度の対象から武器を除外しました。ところが、ドイツ、イタリア、フランスなどでは、イギリスとはまったく逆に、政府が軍縮不況に喘ぐ自国の兵器産業を保護するために積極的に武器輸出を奨励しました。結局、ヴィッカーズ社など自国兵器企業の要請に押されて、イギリスも非公式ながら武器輸出容認に転じ、第二次大戦前夜の東アジアには巨大な武器市場が形成されたのでした。ちなみに、現在検討中と言われている日本の武器輸出貿易保険の目的は、アメリカの対外有償軍事援助制度や両大戦間の軍縮期にヨーロッパ各国が採用した輸出信用保証制度と同じ目的、すなわち武器輸出の推進にあります。