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今年1月に就任したトランプ大統領には、過去のアメリカの大統領からは考えられない言動があります。メディアや司法を完全に敵対視し、それを公言することです。その言動には、アメリカ社会の基盤である民主主義を揺るがす根本的な問題があるといいます。

トランプ大統領の恐るべき発言

レペタ,ローレンス 明治大学での私の授業では、アメリカ憲法の基本事項をたびたびとりあげてきました。

 アメリカ憲法はとても古いものです。人権の保護は1791年から憲法に明記されています。その人権の中で、表現の自由と報道の自由は民主政府を持続させるために極めて重要なものと常にみなされてきました。

 アメリカ独立宣言の起草者であるトーマス・ジェファーソンは、当時のニュースメディアの重要性を強調して、「もし新聞がない政府と政府がない新聞のいずれかを選ぶのであれば、迷うことなく後者を選ぶ」とまで述べています。

 我々の新しい大統領であるドナルド・トランプは、ニュースメディアを直接攻撃することによって、長きにわたるアメリカ伝統と憲法保証に前代未聞の挑戦をしているのです。

 実は、アメリカの歴代の大統領は、報道機関が嫌いです。報道機関は事実を綿密に調べて、大統領にとって都合の悪いことも含めて報道するからです。だから、多くの大統領がメディアと敵対したり、摩擦を起こしたりしました。しかし、それは、憲法で保障された報道機関の当然の仕事の結果なのです。いままでの大統領たちは報道機関を敵対視しながらも、そのことを理解していました。だから、報道機関とはできるだけ良い関係を保とうとしてきたのです。ところがトランプは、これまでの大統領とはまったく違います。彼は、報道機関を「enemy of the people」アメリカ国民の敵とまで呼んでいるのです。大統領が報道の自由という最も重要な憲法原則を攻撃する発言をするということは、誰も想像できないことでした。

 このような発言ができた理由のひとつには、情報技術の進歩も関連しています。ツィッターを使って、自分の支持者たちに向かって言いたい放題のメッセージを出せるトランプ大統領にとって、伝統的なニュースメディアは必要ないのです。報道機関のように、懸命に調査し事実である証拠を得て報道する必要もありません。たとえば、この3月には、トランプ大統領のツイッターにオバマ前大統領が自分のことを盗聴していたと言っていましたが、その根拠も証拠も何もありませんでした。直後には、FBI長官が、「そのような事実はなかった」と盗聴を否定したと報道されましたが、トランプ大統領にとってはそれもたいしたことではないでしょう。彼の支持者たちは、彼のメッセージが真実か嘘かには関係なく、耳を傾けるのですから。しかし、ここで見過ごしてはいけないのは、「報道機関は敵だ、俺の言うことだけを信じろ」というトランプ大統領の独裁的な発言の仕方です。トランプ大統領は、民主主義国家であるアメリカにおいて最も重要な憲法上の価値を覆そうとしているのです。

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