明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

トランプ支持者たちに本当の救いはあるのか!?

明治大学 政治経済学部 教授 廣部 泉

富裕層の富の再配分を断行できるか?

 むしろ注視すべきは、トランプ支持者たちの今後の反応です。いま、トランプ大統領はアメリカに工場を戻したり、移民の入国を制限するなど、目に見える形で支持者たちを喜ばせていますが、そのようなパフォーマンスによって、現状に不満を持っている労働者たちの生活を本当に上向かせることができるとは思えません。ただ、トランプが偉大な大統領となる可能性がまったく無いわけではなりません。実は、好例があります。100年ほど前、共和党幹部から「that mad man」(あの狂気の男)と危険視されながら副大統領に任命され、その後、大統領が暗殺されたために、代わって大統領に就いたセオドア・ルーズベルトです。彼は、不安を募らせる党幹部たちを尻目に、独占資本を規制したり、純正食品・薬事法を成立させるなど、国民が望むことを断行しました。いまでは、ラシュモア山に刻まれた4人の名大統領の1人です。トランプ大統領に必要なのは、国民の望みに本当に応える政策をとった、このセオドア・ルーズベルトのような大胆な行動力だと思います。確かに、いまのアメリカは第2次世界大戦後のように、世界で一国だけ飛び抜けた余裕と力のある偉大な国ではありません。しかし、それでも世界の経済大国であることに変わりはありません。問題は、一部の富裕層による収奪のいきすぎなのです。いま必要なのは、アメリカを再び偉大な国にすることよりも、格差を是正するために富の再配分を行うことでしょう。例えば、ウォールストリート改革のような大なたを振るい、富裕層の富を貧困層に配分するような政策を行えば、トランプ大統領の名は名大統領として歴史に残るかもしれません。

 トランプ大統領に投票した支持者たちが貧しいままであれば、アメリカの社会不安は増し、その行き詰まりを打破するために、また、自分たちにとって都合の良いパフォーマンスが行われるかもしれません。それが外交に現れる可能性もあります。その意味で、私たちはトランプ支持者たちの反応から目を離すことはできません。また、世界大戦の反省から始まった20世紀後半以降の世界の歴史の流れが、大国であるアメリカの内向きの保守主義によって転換してしまうのか、その鍵を握っているのがポピュリズムのトランプ大統領である以上、やはり、その支持者たちの反応からは目が離せません。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

国際の関連記事

イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

2018.4.18

イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 山岸 智子
このままでは、日本は武器輸出大国になる!!

2018.2.28

このままでは、日本は武器輸出大国になる!!

  • 明治大学 商学部 教授
  • 横井 勝彦
「イスラームは危ない!!」を考えてみよう

2018.2.21

「イスラームは危ない!!」を考えてみよう

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 横田 貴之
暴走するのは核を保有した北朝鮮か? トランプか?

2017.11.8

暴走するのは核を保有した北朝鮮か? トランプか?

  • 明治大学 国際日本学部 教授
  • 蟹瀬 誠一
「アメリカらしさ」に逆行する白人至上主義

2017.11.1

「アメリカらしさ」に逆行する白人至上主義

  • 明治大学 法学部 教授
  • 矢ケ崎 淳子

Meiji.netとは

新聞広告連動企画

新着記事

2018.07.11

民主主義と軍事主義。果たして共存は可能か?

2018.07.04

手書き文字の味を活かした、きれいな自分だけの文字ができる

2018.06.27

人の心を理解できないロボットは、人に対して脅威となる!?

2018.06.20

あなたの理想顔のイメージを簡単に画像化できる

2018.06.13

災害大国日本では、保険が中小企業を救う!?

人気記事ランキング

1

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

2

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

3

2018.07.11

民主主義と軍事主義。果たして共存は可能か?

4

2017.03.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

5

2013.09.01

少子化問題を斬る ―原因は、未婚化・晩婚化・晩産化にあり―

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム