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トランプ氏の選挙モデルは日本のネット選挙に応用できるか?

清原 聖子 清原 聖子 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

日本には、日本にあったネット選挙の在り方がある

 今回、トランプ氏がソーシャルメディアを有効に利用した選挙戦略が、日本でも可能なのかは、疑問です。まず、候補者が有権者の共感を呼ぶキャラクターであることが必要です。そのためには選挙に明確な争点があり、候補者が戦いを挑むアウトサイダーであることも条件となるでしょう。アメリカの政治コンサルタントのカンファレンスでも、今回のトランプ氏の戦略が誰にでも使えるわけではないという指摘が出ています。また、日本では主要メディアによるソーシャルメディアの取上げ方が、アメリカとは大きく異なります。この点でも、ソーシャルメディアが起点となってダイナミックな動きが出ることは、難しいのではないかと思います。

 しかし、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた2016年の参院選の際、興味深いポータルサイトがありました。そこでは、選挙ニュースが一覧できるサービスを開設していて、その中に、18歳の視点に応える情報に特化したサイトが別枠で作られていたのです。そのサイトは、政党の数が多く、争点があまり明確ではなく、さらに選挙期間も短い日本の選挙では、ネットが有効な情報収集手段になる可能性を示唆していると思います。世代によって異なる視点に応える情報を、新聞やテレビなどのマスメディアから的確に収集するのは非常に難しいからです。日本に合った「ネット選挙」の在り方を形成するのは、こうした活用がきっかけとなるのではないかと注目しています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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