明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

国際法による説明なしに法の秩序に挑戦する中国に、厳しい南シナ海判決

明治大学 法科大学院 教授 奥脇 直也

南シナ海におけるフィリピンと中国の紛争について、7月12日、オランダのハーグにある国際仲裁裁判所は 中国が主張するこの海域における歴史的権利は、国際法上根拠がないと断定しました。しかし、中国はこの判決について「受入れず、認めない」と表明し、事態はまったく変わっていないように見えます。本当に国際法は効力がなく、無力なのでしょうか。

裁判が万能薬でない国際法

奥脇 直也 国際法は、一般の人にはあまり馴染みがなく、どのようなものか理解している人は少ないかもしれません。一言で言えば、主として国家と国家の関係を規律する法ですが、日本における六法全書のように、法典としてまとめられているわけではなく、国の領域(領土)の問題や、人権の問題、海洋における領域や漁業権の問題など、様々な問題ごとに各国間で取り決められた条約や協定、さらに慣習法などによって構成されています。国際関係における国家の存立の基盤をお互いに尊重し、かつ維持していくということが基本になっています。

 実際、国際法には統一的な法の機関はありませんし、国内におけるような裁判所もありません。それで法なのかと思う人は多いかもしれません。法を犯した人を罰することによって社会の安定を図る国内法を基準に考えるとそうですが、基本的に国際法とは、国家間で合意事項をベースにして外交的コミュニケーションを効率的に行うためのツール、と考えればわかりやすいのではないでしょうか。だから、それは紛争が生じた場合でも、裁判に直ちに結び付くわけではなく、国際法の概念と確定したルールを用いてコミュニケーションすることによって、国家が相互に何を意図しているか、より正確に理解可能にする。これが国際法のひとつの大きな機能なのです。

国際の関連記事

“アメリカの危機感”がトランプを大統領にした

2017.6.1

“アメリカの危機感”がトランプを大統領にした

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 井田 正道
トランプ大統領の発言は、独裁者の発言です

2017.5.10

トランプ大統領の発言は、独裁者の発言です

  • 明治大学 法学部 特任教授(2017年3月31日退任)
  • レペタ,ローレンス 
トランプ支持者たちに本当の救いはあるのか!?

2017.4.19

トランプ支持者たちに本当の救いはあるのか!?

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 廣部 泉
「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

2017.3.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授
  • 根橋 玲子

Meiji.netとは

新着記事

2017.06.21

効果的な高齢者用補聴器を目指して、1/100秒の壁に挑む

2017.06.14

現代の経済学では説明できない!? 縄文時代の持続可能性社会

2017.06.07

移民をスケープゴートにするトランプ政権に改革は期待できるか?

2017.06.01

“アメリカの危機感”がトランプを大統領にした

2017.05.24

原発を不要にした社会から、さらに永続可能な社会へ

人気記事ランキング

1

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

2

2013.09.01

少子化問題を斬る ―原因は、未婚化・晩婚化・晩産化にあり―

3

2017.06.14

現代の経済学では説明できない!? 縄文時代の持続可能性社会

4

2016.11.16

少年法適用年齢、引き下げて大丈夫ですか?

5

2017.06.21

効果的な高齢者用補聴器を目指して、1/100秒の壁に挑む

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム