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2016.06.28

NAFTAの経験から何を学ぶのか、TPPへの示唆

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私たちがNAFTAから学ぶべきこと

所 康弘 日本はメキシコほど経済力が劣っているわけではないので、NAFTA下のメキシコに起こったことが必ずしも日本に起こるわけはなく、参考にはならないと多くの人が思うかもしれません。しかし、もっと複眼的な視点で考察することの重要性を、メキシコの事例は示してくれています。TPPに参加するメキシコよりさらに経済力や政治力に劣った加盟国(南米や東南アジアの途上諸国)の経済社会に与えるであろう影響についても、配慮すべきでしょう。

 そもそもTPPとNAFTAでは制度面で類似点が見られます。両協定とも直接的な関税および非関税障壁の撤廃にとどまらず、投資、サービス、知的財産権、政府調達、紛争解決手続きなど広範囲に渡る、まさしく「WTOプラス」とも言える包括的枠組みとなっています。関税撤廃に関する基準も両協定ともに高水準が求められます。そして、NAFTAと同様、TPPのルール作りと交渉もアメリカ政府と同国の特定分野の多国籍企業主導によって進められてきました。将来的にはこのアメリカ流の通商ルールの適用範囲を地理的に拡大させる狙いもあります。製造業のみならず、特に知的財産権の交渉では製薬会社やアグリビジネスなどの利益や便宜を最大化することも図られています。薬の特許保護の強化は、安価な後発医薬品生産の阻害要因となり、途上諸国の人々にとっては健康問題に直結する問題です。また、アメリカの強力な銀行・保険企業はおそらくTPP加盟国に対しても、積極的な進出を進めるでしょう。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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