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2013.09.01

環境リスクにどう向き合うか ―リスク・デモクラシーの提言―

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「環境的公正」に問題の核心がある

 東日本大震災に伴う福島第一原発事故は、かねてから「環境リスク」の問題に関わってきた、私たち環境社会学者にとって大きな衝撃だった。特に私たちは「環境的公正」の観点から原発を問題にしてきた。「環境問題は、社会経済的格差や不平等の存在によって生起したり、悪化したり、解決が妨げられることが多い」というのがその基本的な考え方である。原発や核廃棄物の捨て場所が経済的後進地域や先住民地域などに作られることが多いことからも、核の問題は「環境的不公正」の典型と考えられる。
 核の問題のみならず、この「環境的不公正」は国内外の様々なエリアで見られる現象だ。環境リスクや環境負荷は、多くの場合都市から地方へ、先進国から途上国へと、偏って分配される傾向がある。公害企業が環境規制の緩い途上国に移転するケースや、国内でも都市の産業廃棄物が過疎地に廃棄されることも散見される。このように社会経済的格差が環境問題を発生させ、その解決を阻害する例は多く見られるのだ。環境問題の解決には、環境負荷の弱者へのツケ回しともいうべき、こうした「環境的不公正」問題の解決が不可欠といえる。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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