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2013.08.01

政治学と情報通信政策の両面から世界を見つめて

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古典などで学問の土台に触れると、学生は伸びる

 私の研究は聞き取り調査に重きを置いていますから、会って話を聞いた人が増えるほど現実をよく理解できるようになります。普通に見ていると、ある分野と別の分野で聞いたあの話とこの話は、それぞれは閉じているように感じられるかもしれませんが、研究を積み重ねていくと、じつはそれぞれが有機的につながっていることがわかってきて、次の研究へと発展していきます。同じように、大学で教えることを通じて学生に会い、話を聞くことからも研究へのひらめきを得ることがあります。とりわけネット選挙の研究については、学生の関心が高く、授業やゼミでの学生との議論は、ネット選挙に対する若年層の反応を知るうえで大事な場になっていると感じています。
 そもそも、私はこの明治大学の情報コミュニケーション学部という学際的な研究が奨励される場で学生に「情報政策論」などを教える機会をいただいたことに感謝していて、自分らしい研究を学生に伝えることのできる居場所だと感じています。グローバル化と情報化が進む社会にこれから出ていく学生に何を伝えようかと考えるたびに研究の意義が深まり、面白さが広がっていく気もします。新しいもの好きが集まるこの学部の学生たちは、スマホの新しいアプリだとか新しいタブレット端末だとかの情報には総じて敏感ですが、深い研究はちょっと苦手なんですね。そこで1年の基礎ゼミでは新聞の論調比較などを課題に出して、社会にアンテナをはることができるように育てていこうと取り組んできました。
 また、メディアに関心はあり、勉強熱心ではあるけれど何をしたらいいかわからないという学生には、政治学に関する古典に近いような重厚な本を十冊紹介しました。すべて読んだその学生は大きく変わりましたね。アクター(政治的主体)とは何か、政策過程の構造などに興味を持つようになって、私のゼミでは三年生の時にリサーチペーパーを全員書くことになっているのですが、その学生は、学部の学生論文コンテストで佳作を受賞するまでに成長しました。当時は、三年生で受賞することはとてもめずらしいことでした。いま、「当時は」といったのは翌年にまた私のゼミから三年生が同じ賞を受賞したからですが(笑)。情報政策論の授業やゼミを通して私は、新しいもの好きな若者に、骨となるような研究の土台を提示することで、現実を深く見る道具、「ものさし」を与えられたらなと思って教育に携わっています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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