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チャレンジすることで未来は拓ける ―レトリック批評の現在と現代若者論―

鈴木 健 鈴木 健 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

若い世代に拡大するリスク回避志向

 現在、世界は様々な課題を抱えています。それに対処するためのキーワードが、コミュニケーションや議論教育の基礎でもある「クリティカル・シンキング」です。これには、批判的に分析する能力に加え、適切な解決案の提示、解決案の比較検討、試行・実行といった要素も含みます。日本の教育はこれまで知識偏重であり、「考える訓練」が抜け落ちており、クリティカル・シンキングを獲得するには日本の教育の再構築が必要と考えます。こうした前向きに考える力の教育の欠如にも一因があると思われるのが若者の「ワーキング・プア問題」です。貧困層が拡大するのは、努力や立身出世といった社会的な物語が崩壊した結果、若者が頑張らなくなりつつあることも背景にあります。一生懸命さや友情、信頼、おもてなしなどは「世界共通の価値観」であることを知らせるとともに、彼らに「夢」を持たせる工夫が必要であると思われます。「ワーキング・プア問題」の根底にあるのは、リスク回避志向です。したがって、私が社会へ、若者へ提言するとすれば、「チャレンジしなさい」の一言に尽きます。チャレンジとは、リスクを取ることでより良い未来を構築するチャンスを目指すことです。頑張って問題を克服すれば必ず見返りがあり、それはその人の財産となります。頑張っている人には必ず後押ししてくれる人がいるし、人的ネットワークも生まれます。これからの時代は「人間力」の勝負といわれますが、人間力とは、能力、ネットワーク力、そして経験から育まれます。
 自分で自分の可能性を狭めてはいけません。ゲームの世界を考えて欲しいと思います。ゲームの中では、誰でもステージアップのために果敢にチャレンジしていると思います。クリアすれば喜びがあり達成感があります。その積み重ねが、次のチャレンジに向かう力となります。ゲームも現実も何ら変わりはありません。それどころか、人生とは自分自身が主役のゲームなのです。世の中や人々が加速度的に変化するグローバリゼーションの時代に、前例踏襲主義や権威主義はもはや役に立ちません。革新的発想と幅広いネットワークを持った行動的人間が必要とされています。不安があっても、我々は希望を求めてチャレンジしていくべきなのです。

※掲載内容は2013年10月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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