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2015.06.01

経済のサービス化の意味 ―求められるモノからコトへの構造転換―

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財務諸表に表れない企業価値

 ――先生は主に金融サービスを中心としたサービス研究に従事し、またコンサルファームを経営するなど実務家の顔もお持ちです。サービス研究に着目した経緯を教えてください。

私は大学卒業後に都市銀行に入行し、8年間勤務しました。そこで感じたのは、顧客志向やマーケティングというものが、一切欠落しているのが銀行という組織だということです。ちょうど金融ビックバンの時代で、競争が始まると言われていた時期ですが、一向に銀行自体に変革の兆しはない。そこで外から銀行を変えたいと思いコンピュータベンダーに転職、日本の金融にデータマイニングを導入するというプロジェクトを担当しました。しかし銀行の顧客情報は最初と最後しかないのです。商品購入にいたる過程で顧客が何を感じ、何を思ったかなど、マーケティングに必要な情報は抜け落ちていました。金融業界を変えるには新たなアプローチが必要と思い、コンサルファームを立ち上げ、また大学院に進学。そこで出会ったのが「サービスマーケティング」だったのです。
私が金融サービスにこだわるのは、日本の企業や経済が再生するには、経済の血液であるお金を流通させる金融の持つ力が極めて重要だからです。銀行は顧客志向のマーケティングを実践し、変わらなければなりません。その際、企業と従業員と顧客、この三者のサービストライアングルのバランスが極めて重要です。それぞれが提供している価値を適正に評価する必要があります。たとえば銀行の顧客である企業の価値は、財務諸表だけに表れるものではありません。「Emotional Value」「Knowledge Value」など、感情や情報の価値を見極める必要があります。それが先に述べた「共創=Co-Creation」の実践につながっていくと考えています。サービストライアングルの中で顧客はリソースを提供し、高品質なリソースは高品質なサービス提供を実現する、その循環が「共創」を生んでいくと考えています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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