明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

経済のサービス化の意味 ―求められるモノからコトへの構造転換―

明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授 戸谷 圭子

「モノからコトヘ」と言われて久しい。一見、これは第三次産業(サービス業)へのシフトを謳ったように思えるが、実は日本経済全体への警鐘を鳴らした言葉である。経済活動はすべてサービスであり、「モノを伴うサービス」と「モノを伴わないサービス」があるとする発想の転換は、行き詰った日本の多くの中小企業にも、新たなヒントを提起している。

要請される経済のサービス化

戸谷圭子教授 ――先生が研究対象とされている「サービス研究」「サービスマーケティング」とは、どのようなものなのでしょうか。まず、その解説からお願いします。

「サービス研究」「サービスマーケティング」といった分野の研究は日が浅く、50年ほどの歴史しか経っていませんが、近年、大きく注目されるようになってきたのは、経済や産業の構造が変化してきたことと密接な関わりがあります。経済は成熟化するほどサービス化が要請されます。日本、欧米の先進国はその好例で、日本のGDPの約70%は第三次産業、すなわちサービス産業が稼ぎ出しています。しかしサービス化というのは、単に産業が第三次産業にシフトすることを指すわけではありません。重要なのは、経済活動そのもののサービス化を進展させることです。
かつてサービス研究は、モノとサービスを二極化対比することで、サービス化の重要性を強調していました。しかし10年ほど前にパラダイムシフトが起こり、そこで登場したのが「サービス・ドミナント・ロジック」という理論です。モノとサービスを分けて経済活動をとらえようとしてきた従来の基本的な前提を見直し、モノとサービスを統合・融合して経営理論を組み直そうという考えです。マーケティングの世界で古くから使われている格言に、「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」という言葉があります。モノづくりの国として経済成長を遂げてきた日本は、ドリルの性能向上に注力しすぎたと言えます。モノの性能追求だけでは事業が成り立たない危機的状況にあることは、ここへきて露呈したモノづくり企業の苦境が物語っています。求められているのは、モノとサービスを融合させる「サービス・ドミナント・ロジック」を導入することであり、「ドリルではなく穴」を提供する経済のサービス化を推進することです。

ビジネスの関連記事

地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

2017.5.17

地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 森下 正
ブラック企業は、人を人間と見ていないことがわかっていない

2017.4.12

ブラック企業は、人を人間と見ていないことがわかっていない

  • 明治大学 商学部 教授
  • 出見世 信之
スポーツビジネスの功罪を考えると、社会の未来が見える

2016.10.19

スポーツビジネスの功罪を考えると、社会の未来が見える

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 釜崎 太
タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

2016.7.8

タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

  • 明治大学 専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授
  • 下村 英紀
「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

2016.3.25

「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 小俣 光文

Meiji.netとは

新着記事

2017.06.21

効果的な高齢者用補聴器を目指して、1/100秒の壁に挑む

2017.06.14

現代の経済学では説明できない!? 縄文時代の持続可能性社会

2017.06.07

移民をスケープゴートにするトランプ政権に改革は期待できるか?

2017.06.01

“アメリカの危機感”がトランプを大統領にした

2017.05.24

原発を不要にした社会から、さらに永続可能な社会へ

人気記事ランキング

1

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

2

2013.09.01

少子化問題を斬る ―原因は、未婚化・晩婚化・晩産化にあり―

3

2017.06.14

現代の経済学では説明できない!? 縄文時代の持続可能性社会

4

2016.11.16

少年法適用年齢、引き下げて大丈夫ですか?

5

2017.06.21

効果的な高齢者用補聴器を目指して、1/100秒の壁に挑む

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム