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ファミリービジネスが地域経済を立て直す ―日本全体にダイナミズムを復権する―

青井 倫一 青井 倫一 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科長 教授(退任)

注目される血縁・地縁をベースにした経営体系

青井倫一教授 従来、企業経営においては米国流の市場ベースの経営が主流であり、ビジネススクールのカリキュラムにおいても同様であった。市場ベースの経営の大前提は資本市場に参加することであり、その上で株主資本利益率であるROEを高める、すなわち成長率を向上させ利益率を維持していくというものである。しかし、リーマンショック以降、ロバストネス(頑健性)に重きをおいたファミリービジネスという経営体系への関心が高まりつつある。ファミリービジネスとは、資本市場に重きを置かず、血縁・地縁をベースにした経営体系で、その多くは地域に根付いた中堅中小企業だ。「老舗」と称される企業も、ファミリービジネスが多い。
世界的にみて、経済・社会の基盤を支えているのがファミリービジネスである。ファミリーによって所有・経営されている企業は、世界の企業数の約70%を占めると言われている。ファミリービジネスが注目を集めたのは、ドイツの経営学者ハーマン・サイモンが1990年代に体系的な調査を行い、「hidden champions=隠れたチャンピオン」と呼ぶべき企業が多数ドイツ国内に存在していることを明らかにしたことによる。「隠れたチャンピオン」の多くは、中堅中小企業であり、同族経営、未上場、地方に基盤を持ち、社歴が長いことなどを指摘している。これはドイツのみならず、世界の先進国で同様のことが見出せるとしている。

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