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2013.12.01

国民皆簿記のすすめ ―社会に役立つ会計の考え方―

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物事の二面性に着眼する「複式簿記」の考え方

本所靖博専任講師 すでに日本語化しているアカウンタビリティ(accountability=説明責任)という言葉があります。本来は、会計主体である企業が、投資家などの利害関係者に対して負う説明責任を指します。この会計に備わっている思想が敷衍し、政府や行政が政策内容について国民への説明義務を負うという意味でも使われ、また環境問題や社会問題が起こった際にも、当事者が説明義務を負うという意味でも使われるようになりました。つまり、会計に備わっている考え方やルールは、現在の様々な社会の枠組みに適応可能なものなのです。
 会計の考え方を端的に示すのが、財務諸表の作成を支える技術的なしくみである「複式簿記」です。複式簿記というのは取引の原因としての側面と結果としての側面、この二面性に着眼して記録するものです。わかりやすくいえば、商品を購入した場合、モノの増加と現金の減少という二つの側面があるということです。二面性に着眼するという考え方は、商取引だけでなく人間関係をはじめ社会の多くの場面で役に立つと考えられます。たとえば経済発展と環境保全が両立する持続可能な社会を考えるとき、「複式簿記」の考え方は極めて有効でしょう。この会計の考え方を、農学の農業経済という分野でどのように役立てられるか、それが私の研究テーマでもあります。会計は一般に商学・経営学の分野で扱われますが、農学部で会計を教育・研究する社会的意義に会計の真の価値を見出すことができると私は考えます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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