Meiji.net

2013.12.01

国民皆簿記のすすめ ―社会に役立つ会計の考え方―

  • Share

「情報の非対称性」を発生させないという役割

 財務諸表に代表される企業会計は固定的なものでなく、時代環境による経済活動の変化に伴い適切に表現される必要があります。たとえば、かつて経済活動では「損益計算」が重視されましたが、今は多くの企業において「キャッシュフロー」が重要視されています。商品を売れば損益計算書上は売上となって「収益」に上がりますが、実際にキャッシュが入ってこなければ、キャッシュ・インはゼロです。「収益はあるのに現金がない」状態が、経済活動の実際を表現しているとは言い難いです。会計は、現状の経済活動を正しく翻訳することともいえます。翻訳機能が不正確であると、その情報の受け手が損失を蒙る社会となってしまいます。
 経済活動における「情報の非対称性」も、会計の重要性を示しています。一般には売り手が保有する情報と買い手が保有する情報の間には格差があります。取引・交換の参加者間で保有情報が対等ではなく、情報優位者に対して、他方が情報劣位者になっている状況が、情報の非対称性です。投資家がある企業に投資をする場合、そこに情報の非対称性が生まれれば、健全で円滑な経済活動を維持することは難しくなります。会計は、情報格差をなくし、情報の非対称性を起こさせないようにすることで、合理的な意思決定を支援する役割を担っているのです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい