明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

ロジスティクスの視点で考える「物流危機は新ビジネスのチャンス」

明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 専任教授 橋本 雅隆

サービスの受益者と提供者の構造的な「ゆがみ」

 このような物流需要の急増に対して物流の能力が追い付かない背景には、物流コストの負担構造にゆがみが生じていることが指摘されています。つまり、物流企業に支払われる料金水準が低すぎるので、運賃の引き上げが必要だということです。実際、物流需要は増えているのに運賃水準は低下傾向にありました。ここを是正しないと若い労働力が物流業界に入ってきません。そこで、現在、物流企業と荷主の間で運賃の引き上げ交渉が進められています。また、消費者に宅配料金を適正に負担してもらうことで、上記のような過度なネット通販貨物の急増は緩和されるかもしれません。しかし、このことの本質には、我が国におけるサービスの受益者と提供者の構造的な「ゆがみ」があるように思われます。私達の意識に「サービスは只」という誤った考え方がしみついているように思われます。上で述べた「送料無料」も何か当然のように思われがちですが、本来、消費者が負担すべき買物コストを専門の宅配便にサービスとして「外部化」しているだけなので、受益者である利用者はその正当な対価を負担すべきです。

 より本質的に考えると、サービスは提供者と受益者の協力によって「生産」されるものです。例えば理容サービスにしてもお客自身が店に行って理容師に適切な注文をしないと望む髪型は実現しないでしょう。宅配便でも受取人が何らかの形で受け取りに「協力」する仕組みを考えなければなりません。つまり、料金負担の問題のみならず、物流サービスの提供者と受益者が分断しているゆがんだ構造がより本質的な問題で、両者を「つなげ」てレベルの高いサービスを維持・向上させることが本質的な課題であると考えています。

ビジネスの関連記事

地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

2017.5.17

地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 森下 正
ブラック企業は、人を人間と見ていないことがわかっていない

2017.4.12

ブラック企業は、人を人間と見ていないことがわかっていない

  • 明治大学 商学部 教授
  • 出見世 信之
スポーツビジネスの功罪を考えると、社会の未来が見える

2016.10.19

スポーツビジネスの功罪を考えると、社会の未来が見える

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 釜崎 太
タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

2016.7.8

タックス・ヘイブンの情報秘匿の殻を破ったパナマ文書

  • 明治大学 専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授
  • 下村 英紀
「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

2016.3.25

「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 小俣 光文

Meiji.netとは

新着記事

2017.12.13

高級熟成肉を身近なものにする!? 産学共同開発の「発酵熟成肉」

2017.12.06

ネット依存によって、現代人の脳の構造が変わりつつある!?

2017.11.29

あなたのスマホは、あなたの情報を収集するスパイ!?

2017.11.22

AIと共生できない人は生き残れない!?

2017.11.15

TOEFL スピーキングスコアがアジア最下位の日本は、変われるか?

人気記事ランキング

1

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

2

2017.03.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

3

2013.09.01

少子化問題を斬る ―原因は、未婚化・晩婚化・晩産化にあり―

4

2017.12.06

ネット依存によって、現代人の脳の構造が変わりつつある!?

5

2015.02.01

公共政策から社会問題を考える ―物事を相対化し、多角的に考えるこ…

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム