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地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

明治大学 政治経済学部 教授 森下 正

多岐にわたる取組みには、地域を守るという強い使命感がある

 地方の企業の積極的な取組みは、まだまだたくさんあります。例えば、私が実際に訪問して、成長している企業に感じるのはフレンドリーさです。フレンドリーに接してくれる企業には訪問しやすくなり、企業にとっては外部との接触機会が増えます。その結果、様々な情報が入りやすくなるのです。その中には、貴重な情報も多いことでしょう。そこで、訪問客を待つだけではなく、積極的に呼び込む仕掛けを行っているところもあります。例えば、工場に見学コースを設けたり、ショールームを併設したり、地域を挙げて産業祭を行い、普段は入れない社内を公開するなどの取組みです。いま、工場の夜景クルージングというと川崎地区が有名ですが、山口県の宇部地域ではそれより早く行っていました。こういう機会を設けることで、多くの人がその企業や地域に興味や関心をもちます。実際、訪れる人の中には、視察目的のバイヤーや、就職活動の若者もいるといいます。

 近年、欧米では、生産ラインにIoTを導入する動きが活発で、日本にとって脅威という議論もありますが、私は、すでに日本の生産ラインは世界最高だと思います。ITが活用される前から、メカニカルな仕組みで、ポカヨケとか、不具合が出たら自動停止する工夫をしてきたのです。いまでは笑い話のようですが、スマートフォンができる以前から、工場の機械が稼働していることを携帯電話で確認できるように、機械に電話機を取付ける工夫などもしていました。いま、機械にネットワークを張り巡らせるのは当然のことです。さらに、最近では究極の全自動生産の開発が進んでいます。従来は、人が楽になるための自動化でしたが、労働力人口が減少していくこれからは、人でなければできないと思われていた部分に関しても、機械化することが必要であると考えられるからです。新潟県燕三条地区の機械メーカーの人たちは、自分たちのためにも、2~3年後には完成させることを目指しています。

 地方の企業の生き残りにかける取組みには、企業だけでなく、その地域を守るという使命感のようなものを感じます。そうした真摯な思いや願いが実践につながり、地方の創成につながっていくのだと思います。しかし、低成長時代に移行した日本では、かつてのように、町工場から大企業に成長していくストーリを描く必要はないでしょう。堅実で、質的レベルが高く、強い企業が地方に増えていくことが、日本社会全体、そして日本経済を支える意味で、必要なことではないかと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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