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地方企業は、自己認識・革新力を磨くことで躍進する

明治大学 政治経済学部 教授 森下 正

創業当時の精神を伝統として引き継ぐ

 ブランドには2つの側面があると思います。ひとつは、製品自体がもっている品質の良さや機能性です。もうひとつは、企業や組織としてのブランドです。この仕事はこの会社でなければダメだという、信用とか信頼が企業ブランドにつながります。地方で頑張っている企業をみると、このどちらかひとつではなく、2つのブランド力をともに高めているのがわかります。新潟県三条市に、私がよく知る工具製造の会社があります。もともと三条市は、江戸時代から鍛冶を地場産業とする地域でしたが、この会社は他社に先駆けて製品のデザインの重要性に着目し、1960年から有名デザイナーを社内に招き、デザインのノウハウを学び、新しい発想と美しいフォルムの製品を追求してきました。それとともに、早くからアメリカで販路開拓を行い、DIY商品を取扱うホームセンター等に製品を拡げていくことに成功します。品質の高さがユーザーに認められ、いまでは、販路は世界20ヵ国以上に拡がり、海外では有名なブランドに成長しています。この会社の魅力は製品だけでなく、会社そのものにもあります。例えば、従業員が仕事を終えて帰るとき、「おつかれさまでした」とは言いません。「おやすみなさい」と言って帰ります。これは、創業当初、仕事を終えた従業員たちは、社内の風呂で汗を流し、社長の家族とともに夕食をとっていた、その習慣の精神的な部分が伝統として引き継がれているからです。さらに、職場にも大手企業にはない環境があります。現場の人手が少ないので、一人ひとりが担わなければいけない役割分担が大きいのです。そのため、従業員同士の人間関係が高まったり、仕事に対するやりがいや充実感も生まれます。

 こうした家族的な雰囲気をもっている地方の中堅、中小企業は、まだまだたくさんあります。いま、ユニバーサルデザインであるとか、男女の雇用機会均等、あるいは弱者やマイノリティの方々を含めて、働きやすい職場環境をつくる制度が求められるようになっていますが、昔ながらの地場産業は、もともとこうした職場環境をもっていたのです。このような企業スタイルも、メイド・イン・ジャパンのブランドの一環として、再評価しても良いのではないでしょうか。特に、労働力人口が減少していく日本では、今後、外国人従業員が増えていくはずです。そうした人たちにとっても、日本は働きやすい環境と思ってもらえるモデルとなるはずです。

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